劇場作品「宇宙ショーへようこそ」鑑賞
公開されたら観に行こう。そう思いつつも、物凄い楽しみにしていた訳ではなかったことや、タイミングが上手く合わずにいた「宇宙ショーへようこそ」。そんな中、以前から舛成孝二監督のファンであり、公開を心底楽しみにしていた友人からお声が掛かり、機会的にも良いタイミングであったこともあり、無事観に行くことが出来ました。
近年のアニメーション作品の中では、特集、CMなどの宣伝、メディアへの露出が非常に高い作品であり、制作側の力の入れようが伺えます。私は結果的に特番なども含め何も目にすることなく鑑賞することになりました。
公開してからの評判に関しては小耳に挟む程度はあったものの、私は基本的に自分が見聞きしたものが全てなので、特別気に留めることもなく真っ白な気持ちでスクリーンを眺めた136分は、全然飽きることなく楽しむことが出来ました。
舛成監督作品は「ココロ図書館」「R.O.D.」「R.O.D. THE TV」「かみちゅ!」など、決してメジャーとは言えないものの、とても丁寧に「アニメらしさ」と「現実と非現実の不思議なバランス感覚」が同居するフィルムで楽しませてくれた印象を強く持っています。そういう意味では、感覚的に「楽しみ方」というのを少しは分かっているかもしれません(笑)。
観始めて最初に感じたのは音響と美術の綺麗さ。いつの頃からか、背景美術にとても目が行く様になり、時代がデジタルに移行してしまった今だからこそ、手描きの良さを求めているのかもしれません。現実に見える風景よりも美しいのではないかと錯覚するくらい息を飲む美術に華を添えているのが音響。これまた映像に惹き込む何気ない自然の音は、それだけで世界に浸らせてくれました。
冒頭は全く状況の分からない戦闘シーンから始まるも、これが何かのきっかけになることは明らかであり、それを頭のバッファに押し込んで継続。非日常から一変、そして始まる日常。もうそこからは舛成ワールドと感じる映像が止まりません。ラジオ体操なり、学校へ行くまでの自転車なり、お店、学校と、豊富なネタ(笑)に溢れていて、芸の細かい世界観構築を楽しみました。そして、始まる日常と非日常の融合。ポチというキャラクターの登場はこれ以上無いと思えるくらいの印象付け。最初は笑える存在に見えるキャラクターが、物語のラストには普通に恰好良く見えたり、感動出来たりするのは上手く展開している証かな、と。
全体の構成として、ちょっと先の展開を気持ち良く見る為の部品が置いてある為、それを回収しながら観るのが楽しい作品だと感じました。言うなれば、TVシリーズのアニメーションを切れ目無しに観ている感じに近いのかも。だからなのか、比較的情報量の多い映像だと思うのですが、特別圧倒されることなく、迷うことなく整理しながら冷静に観られたので、作品そのものを純粋に楽しめた作品でした。
「宇宙」「子供達」というシチュエーションから、何となく頭に浮かべていたのは「銀河漂流バイファム」。行動原理は全く異なるものの、それぞれの責任の感じ方、心の成長とそのきっかけになる出来事、子供ながらも気を遣ったり、上手く言えない事があったりする中での迷いやもどかしさ、ということがとても感覚的に近いもので、そんな視点から観た楽しさもありました。
それと、凄く夢に満ちた世界観であると思いました。「こんな宇宙だったら楽しいだろうな」と純粋に思える設定であり、子供が観たら自分が大人になる未来を楽しみに出来る。そんな雰囲気を醸し出していたと感じました。細かい設定はどうあれ、異星人同士なのに人間味に溢れたその交流の雰囲気に気持ちが温かくなる部分もありました。
物語の中に出て来た「一人はみんなの為に、みんなは一人の為に」という言葉や、月の裏側での審査における設問「宇宙人に頭を良くしてあげると言われたら」の解として「頭が良くなるのは嬉しいけれど、自分でそうなれた方がもっと嬉しい」ということなど、最初の方から作品のテーマとも受け取れる内容が出て共感が持てたのも良かった部分です。反面、ポチとネッポの関係性とその決着についての流れは、その他の部分に比べるとちょっと分かり辛い(分からない訳では無いが、事件が起きてから収束までが、思っていたよりも「ふぅん」と感じてしまった)事が残念ではありました。巻き込まれた5人(特に夏紀と周)の成長を促す結果となった出来事ではあるのですが、「こんな理由でまきこまれたの?」みたいな感覚も残っており、その感じが「劇場版ドラえもん」にも似ているところがありました(笑)。夏紀と周の関係についても、幼少の頃のエピソードを垣間見る瞬間的な回想や1枚の写真が見られると、最後の救出劇でのやり取りにもっと華を添えられた様にも思え、その点は個人的に惜しかったです。
出会いがあって別れがある。そして、子供達だけの秘密の出来事を体験した夏休みは、それぞれにちょっと心の成長を経て、また日常に戻って行く…というのも「夏休み」に相応しいものであり、胸にじんわり来る場面の描き方や、心の痛みや叫びを演出するところで涙も鼻水も沢山出ている(笑)描き方は、とても舛成監督作品の多くで馴染みということもあり、音楽の効果も相まって素直に優しい感動を覚えるに至りました。
キャスト陣も総じて文句無し。主人公となる5人の小学生も、キャラクターにピッタリだったと思います。適材適所となる中堅、ベテランの配置と、チーム舛成の面々(笑)も縁の下の力持ち的存在を楽しませてくれました。
ざっくばらんに取り留めの無い感想を書きましたが、素直に良い作品だと思いますし、観れて良かったです。回数観ることで違った楽しみを見つけることも出来る様に感じます。舛成監督好きの友人に誘われる形で観に行った今回。「近しい友人と語りたい」という希望に応えることが出来たかは分かりませんが、私の言葉で伝えられるものは伝えてみました。
どこに視点を置いて何を観るか。楽しさを自分で見つけられる人にはお薦めしたい映画です。アニメーションが持つ力、オリジナル作品の持つ力、何より創り手の情熱を、この作品から感じ取って欲しいと願わずにはいられません。
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