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2010年7月25日 (日)

「マイマイ新子と千年の魔法」鑑賞

 昨年11月、ひっそりと劇場公開され、口コミで話題に上り始めた頃にはもう殆ど公開終了となってしまった不遇な作品である「マイマイ新子と千年の魔法」。たまたま私は公開直後にこの映画の存在と良い評判を聞き、この映画の監督である片渕須直氏の監督作品「アリーテ姫」が大好きな友人にこの事を伝たところ、その友人は作品の存在自体を知らなかったというくらいにプロモーションが殆ど行われなかったのか、一般には殆ど認知されていない映画でした。

 口コミだけでなく、観に行ったその友人からも良い評判を得ていたので「それならば機会を作って観に行こう」と思っていたものの、その時点で軒並み公開終了…。結果的にスクリーンで観ることが叶いませんでした。それどころか、この状況では映像メディアでの販売自体も危ぶまれる、という話も耳にするくらいでした…。

 その後、有志のネット上での呼びかけや行動により注目が集まるようになり、小さいながらも再上映してくれる映画館などが出て来て、それらは連日満員となるくらいの盛況ぶりとなりました。私も観に行くタイミングが合えば…と思っていたものの、結局ことごとくタイミングが合わずに行けず仕舞い。それでも、「DVDではあるがメディア化も決まった」というニュースも飛び込んで来て、ようやく私も観る機会に恵まれました。

 今回初見ということでレンタルにて観てみることに。

 昭和初期の山口県を舞台にして、新子という一人の少女を軸に何気ない日常を描いた作品で、その新子の町に東京から転校して来た貴伊子との交流、新子の学校の友達や近所の子との交流、新子の家族や学校の先生といった見守る大人達との対話など、本当に普通の日常を描くだけの物語ではあるのですが、とても心を揺さぶられました。これは「感動」というよりは、「郷愁にも似た懐かしさと、童心に帰って子供達の気持ちと同調した結果の感覚」というものなのかな、と思いました。

 空想することが好きな新子は、お祖父さんから聞く昔の色々な話を膨らませて、何でも楽しめる様な活発な女の子。ちょっと「赤毛のアン」のアン・シャーリーに似ている感覚もあります(貴伊子がダイアナ・バリーに似た位置とも取れます)。

 その新子が東京から来た貴伊子に興味を持ち、仲良くなって行く姿。
 新子の妹が居なくなってしまって探す姿。
 尊敬出来る大人に対して敬う姿。
 子供達で協力して池を作り、金魚を愛でる姿。
 その金魚が死んでしまい、皆の気持ちが沈む姿。
 それでも笑おうと皆で約束する姿。
 それが壊れてしまい、子供であることに絶望する姿。
 それでも何かをせずには居られない姿。
 天の川の下、笑顔を取り戻す姿。
 大人から子供へ、紡いで来た歴史を引き継いで行くことを感じる姿。

 新子や周囲の子供達の行動や姿は、本当に今大人である誰もが子供の頃に体験した覚えのある、大小、シチュエーションの差はあれど、全ての気持ち、感覚を理解出来るものであり、その懐かしさと、純粋に笑う子供達の顔を観ているだけで溢れてくる気持ち。これは言葉で伝えるよりも、感じて頂く方が早い、と思える感動です。言葉で伝えられてしまえる「用意された感動をなぞる」という作品が多いと思われる昨今、こうしたフィルムこそ本当の「感動」を味わえるのではないか、と今回この「マイマイ新子と千年の魔法」を観て感じました。

 物語として、「千年前」ということで清少納言の視点を展開し、貴伊子の視点や新子の視点に絡んで来る部品の置き方と、美術と音楽で彩られた的確な世界描写と演出は、本当に丁寧に創られているフィルムであることを感じさせてくれました。観始めた時に感じる「どこが面白さなのだろう?」という疑問の様な感覚は中盤過ぎる頃には綺麗になくなり、観方が分かるというか、理屈でない部分で感じられる様になって来ます。すると最後は子供達の笑顔や自然の風景を観ているだけで胸が一杯になって来るのです。

 この映画は、子供よりも大人に響く作品だと思います。少なくとも、現在30歳以上の人にはより強く響くのではないかと感じます。テレビの無い時代、冷蔵庫は氷を使っていた時代。遊び道具は自然そのもの。そんな時代のことを今は「不便な時代」と一蹴してしまうかもしれませんが、そんな時代において本来子供が持つ純粋な気持ち、威厳のあった大人の存在、「古き良き」という言葉はあまり使いたくないものの、この映画には現代が豊かになった代償として失った大切なものが溢れていると思います。だからこそ、未来を託す子供達を育てる世代である大人に観て欲しい、そういうフィルムだと感じました。大人の都合で子供達の中で育まれる「遊び」の文化を取り上げてしまっている昨今、自分達が子供の頃に自然や大人から何を教わったのか、もう一度思い出して欲しいです。きっと、溢れて来る涙があるのであれば、それが昔自分が体験したことを思い出した”証”なのだと思っています。

 興行収入という数字的なものも大事ですが、メディアが発売され、レンタルも開始された本作は今、「より多くの人に観て欲しい」というものになったと思っています。観た後に何が残るのか、それは観た方ご自身に確かめて欲しい1本です。

 無事観れて良かったです。

 …Blu-ray、発売してくれませんかね…。

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