4Starオーケストラ 2日目夜公演 バンドステージ
「ゲームミュージック」が脚光を浴び始めたのは、アーケードゲームが全盛であった1980年代に入ってから。レコードからCDという音楽の供給媒体が大きく変わった時期も重なって、特に「アウトラン」のBGMを収録した「セガ ゲームミュージックコレクション Vol.1」の大ヒットは記憶に強く残っています(ループ曲ではなく、1曲として完成した初のBGMかも)。それよりも以前から印象に残るBGM群で魅了したナムコの名作たち。ファミコンの普及から多くの人の耳に届く様になった”ピコピコ音”が奏でるBGM。そして、パソコンゲーム最盛期に到達したFM音源やMIDI機器でのシンセサイザーミュージック…。それぞれ衝撃を受け、強烈に印象に残っている私にとってこの「ゲームミュージック」と呼ばれる様になった文化は、自分の中で切っても切れないものになっています。今でもTVゲームを趣味の1つとして親しんでいることや、映像作品を観る際に何よりも劇伴を強く意識してしまう背景にはこうした積み重ねがあります。
そんなゲームミュージックも最盛期を経て成熟期を迎え、もしかすると衰退期に入ってしまったのではないか。そう感じなくもない状況である昨今ではありますが、粗製濫造時代を越えて”本当に良いもの”だけが残ったと考えればそれは歓迎することかもしれません。しかしながら、サウンドトラックとして形に残っていないゲームも多く存在しているのも事実であり、各社のサウンドチームがバンドを結成してライブを行っていた最盛期の様な活気を今に求めるのは難しいかな…と寂しさを感じていました。
勿論、今でもアマチュアバンドが開くライブや「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」の様な超メジャー級のタイトルについてはコンサートが開かれたりしていますが、もっと身近に、もっと広く、もっと熱く、もっと一体感を、と常々思っていた中で1つの企画が目に留まりました。それが今回の「4Starオーケストラ」です。
”4年に一度”というサイクルと「その4年間で支持を得た楽曲や奏者で構成する」という3日間にも渡る祭典。そして、名を連ねる奏者の中には私がその時々で影響を受け、敬愛する岩垂徳行氏とセガ・サウンドチームの光吉猛修氏&Hiro師匠率いる[H.]がクレジットされており、同じ日に公演されるという、私にとって夢の様なステージ。先行申込にて無事参加が確定し(座席も舞台と同じ高さくらいの10列目のほぼ中央という良席!)、当日を迎えました。
事前にセットリストが公表されるというのは通常のライブではあまり考えられませんが、オーケストラコンサートであればそれは不思議ではありません。「4Starオーケストラ」の名の通り公表されたセットリストには、これまで何年もその機会を待ち望んでいた「Burning Hearts ~炎のANGEL~」や「グランディアのテーマ」が載っているではありませんか!? ただでさえ貴重な機会を更にプレミア化してくれる内容に否応無しに期待が高まります。
会場準備の関係で開場が30分遅れ、その結果開演も30分遅れましたが、19:00に「4Starオーケストラ 2日目 夜公演バンドステージ」が無事開幕です!
緞帳が上がると、姿を現す[H.]のメンバー。スタンディングを促す光吉さん。1曲目は「Buring Hearts ~炎のANGEL~」!! ことごとく光吉さんが生でこの歌を披露する機会に巡り合う事が出来ずに早13年。とうとう、本当にとうとうこの時がやって来ました!! 開演前は嬉しすぎてこの曲が流れたらどう対処して良いか分からずにオロオロしていたのですが(笑)、ライブが始まってしまえば、気持ちに従って流れに身を任せるだけでした。カラオケでも都度唄っていた私にとって歌詞は完璧に頭に入っていることもあり、合いの手からコーラスから全力全開。光吉さんの熱いパフォーマンスにも引っ張られて、のっけから最高のスタートでした。
そして続くは「Final Take Off」。S.S.Tバンド時代からの定番中の定番。力強い演奏はあっと言う間に1987年当時にトリップさせてくれました。ギターのメロディが若干聴こえ辛かったですが、私は寧ろゲームバージョンが好きだったので問題無し! 光吉さんのキレの良いベースが光っていました。
個人的に地味に嬉しかったのは「スクランブルスピリッツ」のステージ1をバンドアレンジして披露してくれたこと。ゲームとしてはマイナーながらも(Hiro師匠推薦の「ダイナマイトダックス」よりはメジャーかも?(笑))、システム24のソフトの中では「クラックダウン」「ゲイングランド」に次いでプレイした、結構好きだったシューティング。そのメロディアスな楽曲はバンドアレンジによって格好良く蘇り、ゲームのマイナーさとは裏腹に往年のセガミュージックとして気分を高揚させてくれました。
「Could Be」や「Sleeper」といった「クラッキンDJ」からの出典はHiro師匠らしかったですし、「Receive You」(龍が如く)や「Superlative」(戦国大戦)など私があまり知らない作品であっても、バンドのパフォーマンスの高さも手伝って熱い演奏を楽しむことが出来ました。
聴かせるアレンジだった「LAST WAVE」(アウトラン)や、ステージを締め括るに相応しい「The Winners」(WCCF)は、[H.]のバンドとしての懐の深さも感じさせる良いステージングでした。最後の「The Winners」は会場の一体感もあり、光吉さんのガラスの声帯による素晴らしいビブラートも堪能出来て印象に残りました。
印象に残るといえば、光吉さんの衰えを感じさせない力強いボーカルと、キレのあるベース、Hiro師匠の安定感のあるキーボード演奏は勿論なのですが、3年振りに参加となるタカ氏の格好良いギター、とても素敵に聴かせてくれた福山氏のトランペット、そして高校生とは思えないパフォーマンスを披露してくれた期待の新生工藤氏のドラム。メンバーは色々変わっても、Hiro師匠と光吉さんが居れば[H.]の息吹はキチンと残ることを改めて感じたステージでありました。心残りは「デイトナUSA」や「バーチャファイター」系が無かったこと。これはまた何処かで聴く機会があるかもしれないので、そちらを楽しみにしたいところです。
休憩を20分挟んで、次は岩垂徳行SPECIALバンドの登場!
岩垂さんとは2005年の「スクウェアエニックスパーティ2005」の「History of GRANDIA」のステージを拝見して以来。その前までは年に数回プライベートショーや演劇の終演後にお話しする機会もあったので、本当に久し振り。しかも、そのステージで「グランディアのテーマ」が聴けるなんて、私にとっては凄いプレゼントです。
幕が上がると、センターに後ろ向きに立ち、ショルダーキーボードを携える人が。間違いなく岩垂さんだと確認。振り返ったと思ったら「みんな~!」という第一声に腰砕け(笑)。でも、それが何だか会場の雰囲気を和やかなものにし、あまりに変わらない岩垂さんに、8年近くお会いしていないという私の中の変な緊張感も飛びました(笑)。
開幕曲は「追及~つきとめたくて」(逆転検事2)。「逆転」シリーズは全くプレイしていない自分ではありますが、この曲はとても岩垂さんらしい楽曲で気持ち良く聴くことが出来ました。[H.]に比べると少々地味に感じるバンドではありましたが、堅実な演奏はキラリと光っていました。
そして続く「光と影の戦い」(ルナ -ハーモニーオブシルバースター-)。ゲーム開始冒頭にある四英雄の戦いのバックに流れたこの曲は「ルナ」の世界感を示す代表曲とも言えるもので、「SILVER STAR」と「ETERNAL BLUE」のそれぞれのフレーズを融合させたとても印象深い1曲。残念ながらCDは発売されておらず、ソフト購入時に特典としてもらったCDに1ループ分収録されただけだったので、1曲としてキチンとアレンジされた楽曲を今回は堪能することが出来て嬉しかったです。途中に入る楽曲の主題をコーラスで表現する部分はちょっと泣きそうになりました。
「聖なる剣の調べ ~ラングリッサーIIメドレー」(ラングリッサーII)は、メガドライブの楽曲を原曲イメージを残してバンドアレンジする難しさを語りながらも、強くリクエストしてくれたおおくまけんいち氏の壮大な編曲を岩垂さんが演奏出来るレベルに短くしたエピソードも加えて、キッチリ演奏披露してくれました。
「ゴドー ~珈琲は闇色の薫り」(逆転裁判3)は、岩垂さんがセンターから下がりキーボードへ。その代わり、それまでキーボードを担当していたなるけみちこさんがテナーサックスを持ってセンターへ。ムーディな楽曲はなかなか大変そうではありましたが、音響の関係もあってか少々聴きづらい部分もあったのは残念でした。
そのままなるけみちこさんが担当された作品から”街”のテーマをメドレー披露。「ワイルドアームズ セカンドイグニッション」と「ノーラと刻の工房 霧の森の魔女」が出典ということで、どちらも直接知る楽曲ではありませんでしたが、なるけさんはサックスをリコーダーに持ち替え、岩垂さんもピアニカに。ドラムはボンゴに変わるなどして、民族音楽テイストに早替わり。これまた音響的に綺麗に聴こえなかった部分は残念(特にメインを張るリコーダーがビシッと決まらなかった感が残ってしまい、メリハリが消えてしまった様に思いました)。
終盤は「グランディア」から3曲。リクエスト上位を選曲したというものの、やはりオーケストラで無いこともあって、バンドアレンジに厳しい楽曲は選択されなかった様子(「世界の果て」など)。それでも、「サルト遺跡」「戦闘3」など、岩垂節の光る楽曲群は、そのバンドアレンジも含めて楽しむことが出来ました。
そして最後は「グランディアのテーマ」。その前に岩垂さんがこの楽曲に込めた想いと、7月に急逝した「グランディア」の生みの親である宮路武氏のことを語りました。「今年は大きな災害も多く、悲しいことも多かったけれど、前を向いて一歩を進めて行きたい。愛を持って表現したゲーム、そしてゲーム音楽をこれからも愛して行きたい」と語る岩垂さんの想いは恐らく会場の皆さんに届いたと思います。演奏される「グランディアのテーマ」は、原曲がオーケストラということもあってバンド演奏では迫力不足を感じることも危惧されましたが、この曲のためだけに急遽本番3日前に依頼したというヴァイオリン奏者を投入。バンドアレンジされた楽曲は、当時のプレイヤーであったであろう多くの観客の心に沢山の記憶を呼び起こし(私も途中で泣きそうでした(笑))、危惧していたことなど一蹴して大きな感動を呼ぶことになりました。その証拠に演奏終了後はスタンディングオベーション。誰に言われるでもなく、着席していた観客総立ちでの拍手喝采! プロの演奏家のステージですらなかなか無いこの光景にこうして立ち会え、それが岩垂さんのステージであったことにまた胸が熱くなりました。
そんな鳴り止まない拍手の中、いきなり「アンコールありがとう」と岩垂さん(笑)。「早い、早いよ!」と突っ込み代わりの笑いが起きるものの、本当にアンコールが始まりました。「緊迫4連発」(グランディア)は、アンコールの選曲としてどうかな…と思わなくもありませんでしたが、ボス曲に定評のある岩垂さんのサウンドを更に堪能出来たのは嬉しかったです。
最後は[H.]も呼んで最後の挨拶かな…と思っていたら、何やらステージ上に慌しい動きが。単に挨拶のために人が出で来るのではなく、どうやら合同で1曲演奏披露してくださる様子ではないですか! しかも、岩垂さんはトロンボーンを持っている!? もう、私の中では[H.]と岩垂バンドが組むなんて夢のコラボレーションであり(「スーパーロボット大戦」超え(笑))、「宇宙刑事シャリバン」の最終回でギャバンが蒸着した様な(爆)、この上無い高揚感を味わうに至りました。
実は先程大きな感動を頂いた「グランディアのテーマ」の演奏を聴きながら、ブラスセクションがやはり欲しいなぁと感じた時に、「さっきの[H.]からトランペットの福山さんが参加してくれれば」とか思っていたので、変化球ではありますがその希望が叶った訳です(笑)。
さぁ、準備が整いました。果たして、何を演奏してくれるのでしょうか。
演奏が始まり聴こえて来たメロディライン。これは…これは!
「Let's Go Away」(デイトナUSA)だぁぁっっっ!!!
もう、ラストに相応しい場内一丸となって叫べる素晴らしい選曲! 私もこれまで参加したライブというライブの中で、恐らく最も弾けた瞬間となりました(「アイマス」ライブ超え(笑))。自分の中でも完璧に分かっている曲(…っていうか歌?)でしたので、もう力一杯、腹の底から全力全開で叫ばせて頂きました。もう、この構成、この光景は恐らく出逢うことはないと思うので、本当に貴重な機会に参加が叶って良かったな、と思いました。
そんなこんなで約2時間のステージでしたが、予想以上に楽しむことが出来たと同時に忘れられないステージになりました。セットリストが予め公表されていたとしても、このサプライズで更に気持ちが満たされてしまった様です(笑)。また、ゲームミュージックの持つ力を改めて感じることが出来たと共に、こういう機会がもっと増える様にもっと声を出して行きたいな、と思いました。
参加された皆様、ステージに関わられたスタッフやバンドの皆様、お疲れ様&ありがとうございました!
追伸:
よくよくプログラムを見たら、今日の昼の吹奏楽ステージも行けば良かった…!と後悔(涙)。第二部は「スカイキッド」「リッジレーサー4」「風のクロノア」に加え、松崎しげる氏の「塊オンザスウィング」。そしてアンコールが「愛のカタマリー」だったなんて!!! また、第一部は「ドラゴンクエスト」ステージながらも、アンコール楽曲が「この道、わが旅」という私が唯一知っている「ドラゴンクエストII」の楽曲で1、2を争うほど好きなエンディングテーマだったなんて…。「4Starオーケストラ」、なかなか侮れません…。
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