アニメ「THE IDOLM@STER」#23 「私」
ラストに向かって動き出す物語。これまで「アイドルマスター」という作品を支えて来た作品の顔とも言うべき春香の、満を持してのエピソードが開幕です。その幕を開けるのは舛成孝二監督の絵コンテという、相応しい人選にこちらも期待してしまいますが、それと同時に作品の着地の方向性を決める回として観ている方としては不思議な緊張感がありました。
冒頭から竜宮小町の「七彩ボタン」をバックに、春香が収録を終えて移動する場面を映します。亜美と真美、千早、貴音、真、雪歩と響とやよい、美希、そして勿論春香自身も含め、今や街中・誌面の至る所で見掛けられる様になった765プロ所属アイドル達。忙しい日々に追われる彼女たちがどんな思いで今を頑張っているのか。常にみんなを気に掛けて来た春香がどんな問題に直面するのか。それが本エピソードの見所になるのは間違いなさそうです。
765プロのアイドル達は、忙しい最中新春ライブに向けての練習もしなければならない!ということで合同練習を予定するも、スケジュールが押していたりして定刻に集まれないメンバー、参加出来なくなったメンバーも続出。そんな状況に寂しさを覚える春香でしたが、暗い顔を正して「集まれたメンバーだけでも出来ることをしよう」と他のメンバーに笑顔を向けます。そんな春香を観て「先週もそうだったけど、春香の一番悪い癖がここに来てクローズアップされるんだな…」と、観ているこちらも辛くなって来ました。春香は全てを抱えて、それでも笑顔で頑張ってしまう娘。みんなへは世話を焼くのに、自分は世話を焼かれない様に振る舞おうとする嫌いがある。頑張るのは決して悪いことではないけれど、そんな春香を支えるポジションにプロデューサーが居る訳で、アニメでは地味に赤羽根プロデューサーがキチンとその位置に居てくれていることをこれまでの22本で描いて来たと思います。だから、赤羽根プロデューサーが居れば大丈夫! …居れば…?
「忙しくて練習には顔を出せない」と前回言っていた赤羽根プロデューサーは、確かに方々駆けずり回っている様で、画面にもあまり登場していません。事務所に戻った春香を迎えてくれたのは小鳥さん。クリスマス時期が過ぎても、事務所にはそれぞれに宛ててのプレゼントが山盛り(忙し過ぎて手つかず、ということでしょうね…)。「ゆっくり休むことも仕事」と小鳥さんは言うものの、「事務所に帰って来ないと一日が終わった気がしない」と春香。ガランとした事務所は、物が溢れてはいるもののどことなく寂しい。小鳥さんの淹れたココアを啜る音が響き渡るくらいに静寂した事務所に近づく足音は…赤羽根プロデューサー! 「一度も転ばなかった」と言う春香へご褒美として(笑)刷り上がった新春ライブのパンフレットを見せ、自信作と言うだけあるその出来に喜ぶみんな。色々な思いが込められたシーンに流れるのは「まっすぐ」のアレンジ。もうライブのタイトル「いつまでも、どこまでも!」だけでも想いが溢れそうなのに、こういう演出は画面を見る私の視界が滲んで来るので止めてほしい(笑)。
日にちが変わって、次の合同練習の日。収録を終えた後、スタッフに呼び止められた春香は「今日は時間が無い」と断ってレッスンスタジオへまっしぐら。しかし、来ていたメンバーは千早、真、あずさ、雪歩の4名のみ…。そんな状況にまた気持ちが暗くなる春香。去年とは全く変わってしまった環境にまた寂しさを感じてしまうものの、やはり春香は無理して笑ってみんなを鼓舞します…。
レッスンの帰り道、そんな春香の様子に気付いた千早が春香に言います。「海外レコーディングの日程を変更しようか」と。でも、千早の夢を応援したい春香は「大丈夫!」と笑顔を向けて、また背負います。そういうやり取りを歩道橋の上を使って演出するのが(今回は色々なカット割りにも)舛成さんらしさを感じたりしてしまいます(笑)。それにしても、合同練習のために自分のスケジュールまでどうにかやり繰りしていた春香の新春ライブへの意気込み・思いの強さは他メンバーよりも圧倒的。空回りしない事を祈ります…。
合同練習のビデオチェックを自宅でする春香(流れていたのは「i」)。そんな春香の表情には全く笑顔がありません。「全員で集まるのが無理なら、近くに居るメンバーで」と提案するも、次の合同練習の日はスケジュールの調整が出来ないということから、春香の知らないところで中止に…。もう、春香の気持ち的空回りはピークだよな…と思っていたら、事務所に戻った春香が見た赤羽根プロデューサーの新春ライブに懸ける情熱。「それがみんなで創る765プロのライブなんです!」と力説する赤羽根プロデューサーの言葉に力を貰った春香は、また沈んでいた気持ちを上昇させて笑顔に。
新春ライブに向けて、そちらを主に全力を傾ける春香。しかし、他のメンバーは新春ライブを蔑ろにする訳では無いにしても、目の前の1つ1つにも全力で傾けようという心もち。主題歌の生放送お披露でセンターという重圧を撥ね退けて歌い上げた雪歩の「Little Match Girl」は、ゲームを完璧にトレースしたステージシーンの映像も手伝って素晴らしい仕上がり。「スノーフレークリリパット」を着てこの歌を唄う雪歩、というのは完全にスタンダードになりましたね。ここでのメンバーが17歳トリオだったのも素敵でした。
765プロのアイドル達が総出演で好評を博す「生っすか!?サンデー」も(千早は「出張中」になって代役パネルが座っていた(笑))、「日曜日に765プロの全員を独り占めするのは止めてくれ」と外部からの圧力もあり、どうにもスケジュール調整が出来ないという現実もあって、まさかの打ち切り決定…(涙)。春香にとっても思い入れのある番組の様で、また春香に暗い影を落とす要因が増えて、観ているこちらの気持ちも沈みます…。
場所を移して、ミュージカル「春の嵐」の舞台稽古現場へ。稽古中でありながら、合同練習のことを考えて時間ばかり気にする春香。演出家は美希と春香に向かって「どちらかを主役を演じてもらう。とにかく全てを出し切れ!全てを見せろ!この役に自分をぶつけるんだ!」と熱血指導。「おぉ、まだ主役が決まった訳では無かったんだ!」とまだ舞台上での春香vs美希の可能性があることにちょっと熱くなりましたが、「今の春香じゃなぁ…」と直ぐに冷める私。その図式を実現するには、何か春香の気持ちを大きく動かす何かが必要だよな…と思い見続けていると、稽古の休憩時間に美希と春香が直接話すシーンにて「一緒に頑張ろう」という春香に対し、「絶対に主役を獲りたい」という美希が描かれました。仲間であり、ライバルでもある。いつも仲良しでは上に行くことは出来ない。そんな事が改めて提示されたシーンは、(それがプロデューサーへの気持ちの強さであったとしても)美希が本気で挑んでいる証であり、春香自身が本当に「アイドル」として自分で何をやりたいのか目標が見つけられていないことを露呈した瞬間でもありました。バックに流れる「relations」も、美希の気持ちを後押しする様な感覚があり、春香の心の寂しさを演出していた様に思いました。
そんな沈んだ気持ちの春香が最後に頼るのはやはりプロデューサー! 事務所に行くと社長が掃除しており、プロデューサーはおらず…。目的を無くした春香は、特に社長に託することも無く、ミュージカルの稽古場へ。
今一つ気の無い春香に、演出家もガックリ。手元のキャスト表の名前の脇には「春香:うーん…?」「美希:元気…!!」と書かれていました。今のままでは、そのどちらにも主役を任せられない状況なのでしょう。このミュージカルを成功させるために足りないものは…という展開を考えると、どうしても「アイドル伝説えり子」の36話と37話を引き合いに出してしまいます。結果的にえり子と麗の本気のぶつかり合いに勝利したのは麗(ここでは美希に当たる)。その要因になったのは、麗に全てを懸けた項介の存在。春香がミュージカルの主役を獲れるかは分かりませんが、大きな切っ掛けに繋がるのはプロデューサーの存在…?
と頭の片隅で色々考えながら観ていると、陣中見舞いにやって来た赤羽根プロデューサー。「来た、勝利の鍵!」と、そこでのやり取りを観ていたら、春香が相談を持ちかけようとしていたところに美希が来てプロデューサーを横取り。前回に引き続き、また美希にタイミングを奪われて逸してしまう春香(汗)。「あぁ、これじゃまた相談出来ずに春香は抱えちゃうだろうな…」と思っていたら、正にその通りに…(涙)。
しかも!! それだけでは終わらせなかった今回のエピソード。
無理に笑顔を作って「何でもないです」と後ずさりする春香。
その背後に舞台上の迫りが下がった(穴が開いた)状態が。
それに気付かない春香。
そして、その迫りに春香は足を踏み外す。
気付く赤羽根プロデューサー。
とっさに手を伸ばした赤羽根プロデューサーは間一髪!
春香を引き上げて舞台へ放り投げる。
その勢いで赤羽根プロデューサーは…
(身代わりに落ちた事が分かる音のみ描写)
ここでブラックアウトした画面はエンディングへ…(激汗)。
何も出て来ないというのは本当に恐ろしい演出で、なまじ観えたり聴こえたりした方が気持ちとして楽だったりします。今回正にその恐ろしさを改めて知りました。今回のエンディングは「見つめて(作曲:Yoshi/編曲:佐久間誠)」のインスト。これは確実に新曲として歌詞が載って歌として披露されるシーンがあると思いますが、その気持ちがあるからこそ観ていた自分の精神を落ち着かせることが出来たと言えます。エンディングの後半、ようやく映像が出たと思ったら、手術中のランプが点灯した廊下で立ち尽くす美希、見守る社長、祈る小鳥さんと律子。そして…号泣する春香…(涙)。動画でもなく台詞も無い、ただの止め絵の効果は絶大でした。
とんでも無い幕引きで終わった23話(もう11話や19話の引きとは比べられない)。こんな気持ちになったのは度々引き合いに出している「アイドル伝説えり子」以来。もう、春香がぎこちなく笑うたび、頭をコツンとやるたび、周囲やその相手を気遣って「何でもない」と言うたび、こちらは心が締め付けられる想いでいっぱいになります。今回特に、台詞以上に間や映像演出が雄弁に語っていたシーンが多かったと思いますが、本当に重要なエピソードを舛成監督はやり切った!素晴らしいです。演出面は本当に丁寧で隙が無かった様に思います。
春香はきっと自分を責めて責めて、全てを抱えてしまうでしょう。一番春香の傍に居た千早もおらず、最も春香を理解して見守ってくれていたプロデューサーも居ない(その原因を作ったのが自分だと思い詰めている)中、春香はどうやって立ち直るのか。これは765プロ全員で解決して行くしか道は無いと思うので、それを見守るしか出来ない私たちは全てを受け入れ、受け止めるだけです。今回は絵コンテだけでなく作画の頑張りも特筆したいエピソードでしたが、こんな感情を抱いたことからして制作陣の狙い通りに完成させられたのではないかと思います。そう思うと16話とはいったい…?(爆)
今回のスポンサーコールは美希、「NO Make!」案内文は千早。
「NO Make!(PW:765PRO)」は「電話(1)(千早)」「電話(2)(響)」「電話(3)(律子)」。どのタイミングでの電話なのかちょっと読み辛い部分もありますが、全て春香が基準になっている点を考えれば紐解くことが出来ます。ニューヨークで充実した日々を送る千早が春香を案じたり、合同練習に行きたくても行けず、友達との約束を守れない自分に問いかけたり、営業電話ばかり掛けていた時期から、営業電話を断る電話ばかりしている律子が思う理想の事務所のあり方だったり、どれもそれぞれの想いがキチンと出ていて印象に残ります。どれも聴いて損のないショートエピソードでした。
次回は「夢」。春香が思い悩む姿の解決編だと思いますが、春香が、765プロのみんなが、本当の意味で乗り越えなければならない壁に差し掛かっている今、絶対に乗り越えて羽ばたいてくれると信じるのみ。もうここまで来たら怖くありません。残る2話で最高の感動をもらえると信じています。何と言っても「クリスマスプレゼントの財布」、ミュージカル「春の嵐」の主役争い、新曲「見つめて」の歌披露(作曲が「まっすぐ」「またね」「shiny smile」のYoshi氏だから余計に期待!これで作詞が朝日祭さんや伊那村さちこさんだったら号泣確定)、2nd.ライブ「いつまでも、どこまでも!」の開催という、最高の伏線たちが回収される訳ですから!! そして春香が第一話で言っていた「アイドルとは?」について答えた「夢…ですかね…?小さい頃からの憧れだったんです」にしっかり結実して欲しい!
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コメント
確かに来週への素晴しい引きでしたが、なんとも痛い・・。
「皆で頑張る」という気持ちでやってきた春香にとって、合同練習・全員での番組・事務所での会話など、一番大事にしていきたい部分が無くなっていくのは辛いでしょうね。
それも皆が頑張った結果という訳ですので否定もできませんので、「皆が一緒じゃないとダメ」というのはわがままと考えてしまうのも無理もないですね。
春香を元気付ける事が出来るプロデューサーは大変な事になってしまいましたし、どうやってこの状況を打開できるか期待です。(社長が登場したので、そこでなにかフォローが入るのか?と思っていましたが・・・)
さらに辛いのが千早の立場でしょう。
帰ってきたらPは重態、春香は重症。
最後は笑顔で終わることは誰しもが確信しているでしょうが、なんとも気が気でないです・・。
投稿: トウカ | 2011年12月10日 (土) 21時14分
>トウカさん
私も今回は次回の結果を得るまでは何回も観直すのは気が重いエピソードです。何よりもエンディングラストカットの春香の顔は胸を締め付けます。
春香の良い点が丸々悪い点になってしまったり、春香自身の”人”としての厚みを増すのに必要なエピソードではありますが、アニメ「アイドルマスター」の物語として春香が背負わされた役割は大きくて重く、笑顔でない表情を見なければならないのは、やはり辛いですね…。
でも、春香だから任せられるポジションだと思うので、私たちは全てを受け止めて、最後はみんなで笑えたら嬉しいです。
私(i)、夢(dream)、と来ているので最後は消失(lost)じゃないかとか、夢だけに夢オチだとか、もっとキャッキャウフフな展開にすべきで鬱展開なんて誰も望んでいないとか、色々な意見が噴出しているみたいですが、私は今の様な展開にしてくれたスタッフにはとても感謝しています。だからこそ、最高のフィナーレであり、最高のスタートとなるラストを迎えて欲しいと強く思っています。
何にせよ、楽しみです…っていうか、この不安から解放して欲しい…というのが本音かもしれませんね(笑)。
投稿: こうたろ | 2011年12月12日 (月) 19時42分