クロジ第11回公演『かみさまのおかお』
初めてクロジの舞台を観劇してから4年。私にとって3回目の観劇となる第11回公演「かみさまのおかお」を本日観てきました。
年々チケットを獲得するのも大変で、今回は「座席を選ぶ」などという余裕も無く、何とか取れたという感じでした。多くの方に支持されるからこそ争奪戦になるというのは嬉しい反面、自分が観に行けなくなる可能性も高くなるのが辛いところ。とにかく、今回は無事に手配出来た訳ですから、後は心して舞台を観るのみ。劇団名も「乙女企画」が外れて「クロジ」のみとなった初の公演ですから、そんな記念すべき回に立ち会えた事も意識して。
今回は配役の1つが公演によって別キャストとなるものでしたが、私が観たのは藤田咲さんの回。逆に主宰の一人である福圓美里さんが舞台に立たない回でもあるのが残念ではありますが(そういう意味では2公演取れれば良かったのでしょうけれど…)、それはそれということで。今回の客演でもある能登麻美子さんや藤田咲さんが、クロジの面々とどの様な掛け合いで魅せてくれるのか。年に2回もクロジの公演が観られるというのも嬉しかったですが(逆にその前は震災の影響で丸々1年観られなかった)、これだけ毎回の舞台公演を楽しみに出来る存在になっていることに自分でも驚いています(今まで客演の役者さん目当てに観劇したことはあっても、特定の劇団を楽しみすることがなかったので)。
今回の「かみさまのおかお」は、生き神様の伝統を守って来た家系の家族が織り成す現代劇。登場人物のの生き方に人生訓が隠されている様な、それぞれがそれぞれに懸命に生きる中でどこか歪な感覚があるというとてもクロジ的なスパイスの効いた設定(女性の生き様が軸にある)は、登場人物が7名しか居ないということが嘘の様に厚みのある物語に展開して行きます。登場人物が少ない分、関係把握や人物理解が早く出来るのでそれだけ物語に集中出来るのも良い点です。
クロジの公演でもう1つ特筆したいのは舞台そのもの。立体的に構成された舞台は、主軸となる中央以外の両脇や奥、手前全てがスポットライトを当てる事で別の場面として切り取られ、大掛かりな舞台移動をせずとも一瞬にして場面転換を実現しているのは今回も健在。時折幕を下ろしてそこをスクリーンとして使う演出を挿入したり、舞台全体が演出を最大限に活かす装置になっているのはいつもながら感動させられます。
能登さんの役どころとしては、ある日神様として祀られることになって20年以上経ってしまった女性を演じている訳ですが、もう世間から隔絶された生活をしていた為に、人間として歪な部分を持っています。そんな女性が抱える問題や悩み、突然得た自由の中で見付けたことが「自分が神様として祀られること」しか残っていないことに気付き、自分と一緒に生きる人が欲しいと、神様である自分が神様にお願いするという結末までの流れは、魂の叫びとも取れる全力の演技で息を飲むものがありました。「エンガワノクラゲ」の時もそうでしたが、少しズレた感じの女性を能登さんが演じると角が無くなる分、強烈な印象を残す様に感じました。
藤田さんも高校生のあまね役を全力で演じ切っており、とても印象に残りました。別公演ではこの役を福圓さんが演じるということから、そちらも観てみたいと思えたのは藤田さんの演技あってこそ。15歳という多感な頃の感情の噴出し方は、凄い迫力がありました。
その他、前回公演で主人公「藩金連」を演じた木村はるかさんの演じるあまねの母親は、様々な我慢を重ねて自分を偽りながら生活する面を好演し印象に残り、主宰である松崎亜希子さんは、神様の妹ながら神を奉って生活する事に嫌気が差して家庭を飛び出した弓香を全身で演じ、舞台を纏め上げる役割を文句無しに果たしてくれ、その恋人役で客演の鈴木達央さんはその人生を踏み外す流れを好演し、あまねの父親役の三原一太さん、あまねの通う学校の生徒会長役である中泰雅さんもそれぞれの役割(駄目な人間振り(笑))を完璧なまでに演じきり、全員が素晴らしい演技で舞台を盛り上げてくれました。
終演後に購入したパンフレットと台本に目を通し、ラストシーンは台本と異なる演出になっていましたが、「タイトルの意味」という意味では台本の方が分かりやすいものの、舞台演出としては公演版の方が良いと思いました。こうした変更点も観られるのが、公演が”生もの”であることを感じられる面白さの1つですね。パンフレットの皆さんのコメントには「実際の役柄と現実の自分」との比較が多く、そんな切り口からも楽しむことが出来ました。
2時間という時間を全く感じさせない、とても内容の濃い公演だったと思います。「クロジ」としての軸がある中、毎回新鮮な舞台を感じさせるクオリティは、上手く客演を位置づけて全員の力量をバランス良く配置した上で個性を活かす配置から生まれるものなのだな、と今回感じることが出来ました。頂いたプログラムには、来年10月に今回と同じ俳優座劇場にて第12回公演が決定していることが告知されたので、また次回観劇出来たら嬉しいです。その時、今回の「かみさまのおかお」のDVDが販売されるのであれば、そちらも欲しいです。
素晴らしい舞台を創り上げた役者の皆さん、関係した全てのスタッフの皆様、お疲れ様でした&ありがとうございました!
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